O・ヘンリー「運命の衝撃」(THE SHOCKS OF DOOM) 翻訳中(02)
公開版:運命の衝撃 : 11005m
前回:
O・ヘンリー「運命の衝撃」(THE SHOCKS OF DOOM) 翻訳中(01) - ぐるぐる飜譯
Raw and astringent as a schoolgirl—of the old order—young May breathed austerely among the budding trees.
訳:
女学生――それもかなり古めかしい――のような未熟で辛辣な若い五月が、芽吹きはじめた木々のあいだから手加減もせず肌を刺した。
訳者の理解(もしくは無知無理解):
わかったようなわからないような詩的表現である。英語の素養がない訳者には深く理解した自信がないのでここは機械的に訳すしかない。
大久保訳は、昔いたような若い女学生のようなという段の形容 Raw and astringent の Raw に「ういういしく」を当てているようだが、「初々しい」だとなんだかよいもののように感じる。しかしこのセンテンスは全体的にポジティブな意味が全然ないのではないだろうか?
性的な意味が込められているわけでもないだろうが、この昔の女学生というのは「成熟した包容力のある女性」とは違い「未成熟で刺々しい少女」の含意であり、そのような五月、ということではないかと思えた。
そこで、breathed austerely 「飾り気なく吹き付ける」とでもするところを、「手加減もせず肌を刺した」と意訳気味にした(うーんこれははたしていいのだろうか…?)。
Vallance buttoned his coat, lighted his last cigarette and took his seat upon a bench.
訳:
ヴァランスはコートのボタンを閉じて最後の煙草に火をつけると、ベンチに腰を下ろした。
訳者の理解(もしくは無知無理解):
五月が刺々しいから(緯度の高いニューヨークはおそらく五月でもまだ少し寒い https://tabizine.jp/2018/03/09/176603/ )、コートのボタンを閉じたのではないか、ということで、前段の翻訳の補強材料。
For three minutes he mildly regretted the last hundred of his last thousand that it had cost him when the bicycle cop put an end to his last automobile ride.
訳:
彼の最後の自動車旅行が警官に止められてあえなく終わり、しかもそれで最後の千ドルの、そのまた最後の百ドルを支払う羽目になったことを三分ほど軽く後悔した。
訳者の理解(もしくは無知無理解):
the bicycle cop というのが何なのかよくわからない。ネットで軽く調べた限りでは自転車に乗ったおまわりさんしか出てこないが、それとこれは違うだろう。いやそれとも、当時からおまわりさんが自転車に乗っていたのだろうか? とにかく交通巡査(大久保訳)ということなのだろうけど。
ところで英語国民の印象では「警察官はバイク(二輪)」なのではないか。トランスフォーマーコミックの解説で、「バイクに変形するトランスフォーマーは警察官になる」みたいなことが書いてあったのを読んだよ。ロボコップもリメイクではバイクに乗ってるし。
Then he felt in every pocket and found not a single penny.
訳:
そして彼は全部のポケットを確かめてみたが、1ペニーすらも見つけることができなかった。
続き:
O・ヘンリー「運命の衝撃」(THE SHOCKS OF DOOM) 翻訳中(03) - ぐるぐる飜譯