ぐるぐる飜譯

しろうと翻訳者の理解と誤解、あるいは無知無理解

O・ヘンリー「緑の扉」(THE GREEN DOOR) その5

https://trnlat.hatenablog.com/entry/2019/05/05/173957 からの続き

 

※この文章は、ものすご~く適当に逐語訳した仮訳初稿を、文面をろくに見返しもせずに投稿した(Google翻訳以下的な)ものです。全訳したあと、あらためて訳文を見直し、体裁を整えて別のブログなどで公開されます。

 

投稿済:https://islecape.exblog.jp/30617842/

 

"Fainted, didn't I?" she asked, weakly. "Well, who wouldn't? You try going without anything to eat for three days and see!"

「私、気を失ってた?」彼女は弱々しく尋ねた。「そうね、そうならない人はいないでしょ? あなたも三日間なにも食べずに過ごしてみればわかるはず!」

 

"Himmel!" exclaimed Rudolf, jumping up. "Wait till I come back."

「なんてこった!」とルドルフは叫びながら勢いよく立ち上がった。「僕が戻るまで待ってるんだよ」

(Himmelはドイツ語「天国」からきている感嘆詞。ルドルフは名前からしてドイツをルーツに持つ若者であることはわかっている。彼自身が移民としてドイツから来たのか、それとも親の影響でとっさに出たのがこの言葉なのかというところまではわからない。最後の一葉のベアマン老人のような訛りはないし、話し言葉にもドイツ語文法の影響を特に感じないので(僕のつたない英語力では断言できないが)、移民二世くらいではないかなあと思うのだが)

 "Wait till I come back."は、シャーロック・ホームズが言うところの「動詞を虐待して文末に持ってくるのはドイツ人」というのを感じさせぬでもない。

 

He dashed out the green door and down the stairs. In twenty minutes he was back again, kicking at the door with his toe for her to open it. With both arms he hugged an array of wares from the grocery and the restaurant. On the table he laid them—bread and butter, cold meats, cakes, pies, pickles, oysters, a roasted chicken, a bottle of milk and one of red-hot tea.

彼は緑のドアから飛び出て階段を下った。二十分で彼は再び戻り、彼女に開けさせるためにドアを爪先で蹴った。彼は両腕に食料品店やレストランで手に入れた品物を目一杯かかえこんでいた。テーブルに彼はそれらを並べる――バターパン、コールドミート、ケーキ、パイ、ピクルス、牡蠣、ローストチキン、ミルクボトル、そして温かい紅茶。
(コールドミートの次のcakesとpiesは、もしかすると「フィッシュケーキ(魚のすり身)」「ミートパイ」などのおかず系のものではないかともちょっと思ったが、普通に訳した)

 

"This is ridiculous," said Rudolf, blusteringly, "to go without eating. You must quit making election bets of this kind. Supper is ready." He helped her to a chair at the table and asked: "Is there a cup for the tea?" "On the shelf by the window," she answered. When he turned again with the cup he saw her, with eyes shining rapturously, beginning upon a huge Dill pickle that she had rooted out from the paper bags with a woman's unerring instinct. He took it from her, laughingly, and poured the cup full of milk. "Drink that first" he ordered, "and then you shall have some tea, and then a chicken wing. If you are very good you shall have a pickle to-morrow. And now, if you'll allow me to be your guest we'll have supper."

「なんて無茶なことを」ルドルフは叱るように言い、「なにも食べずにやっていこうなんて。そんな選挙で賭けをするような真似からは足を洗わないといけないよ。食事の準備ができたからね」彼は彼女に手を貸し食卓につかせてから尋ねた。「お茶用のカップはどこかな?」「それなら窓のところの戸棚に」彼女は答えた。彼がカップを取って再び戻ったときに見たのは、我を忘れたかのように瞳を輝かせながら、女性の的確な直感によって紙袋の中から探し当てたディルピクルスにかじりつこうとする彼女だった。彼は笑いながらそれを取り上げると、カップになみなみと牛乳を注いだ。「まずはこれを飲まなきゃ」彼は命じた。「その後でお茶もいくらか、それから鶏肉の手羽だね。もし君がとてもいい子にしていたらピクルスは明日あげるから。さて、もし君が僕を君のお客として認めてくれるなら、一緒に食事をしよう」

 

He drew up the other chair. The tea brightened the girl's eyes and brought back some of her colour. She began to eat with a sort of dainty ferocity like some starved wild animal. She seemed to regard the young man's presence and the aid he had rendered her as a natural thing—not as though she undervalued the conventions; but as one whose great stress gave her the right to put aside the artificial for the human. But gradually, with the return of strength and comfort, came also a sense of the little conventions that belong; and she began to tell him her little story. It was one of a thousand such as the city yawns at every day—the shop girl's story of insufficient wages, further reduced by "fines" that go to swell the store's profits; of time lost through illness; and then of lost positions, lost hope, and—the knock of the adventurer upon the green door.

彼は別の椅子を引いた。お茶は彼女の瞳を輝かせ、彼女の血色もいくらか戻した。彼女の食べ始める姿は、飢えた野獣のような一種の優美な獰猛さを伴っていた。彼女はまるで、この若い男がそこにいることも、彼が彼女に救いの手を差し伸べたこともごく自然なこととみなしているようだった――といってもそれは彼女が世間的な慣習をわきまえていないということではなく;むしろとてつもないストレスが彼女に対し人間の世間体を脇に置いてよい権利を与えたといったような具合だ。しかし力と安らぎを取り戻してゆくにつれ、もともと身につけていたいくらかの人間的な慣習が蘇ってくると、彼女は彼にささやかな身の上話を始めるのだった。それはこのような街が毎日あくびするように吐き出しているありふれたもののひとつだった――店員の少女の不十分な給金の話で、店の利益を膨れさせるために“罰金”でさらに減らされ;病気になって時間を失い、さらに仕事も失い、希望もなくし、そして――この冒険者が緑の扉をノックしたというわけだ。

(仮訳その2 https://trnlat.hatenablog.com/entry/2019/04/30/152541 で当時隆盛だったワーキングガール小説に言及したが、このヒロインの境遇はまさにそれの主人公である)

 

But to Rudolf the history sounded as big as the Iliad or the crisis in "Junie's Love Test."

だが、ルドルフにとってその話はまるでイリアスか、あるいは『ジュニィのラブテスト』に出てくる危機かというような一大事に思えた。

(つまりこの話は、ルドルフの視点だけだと冒険者である男がトロフィーとなる少女を獲得するという流れでしかないのだが、少女の視点に立場を変えるとたちまちワーキングガール小説の設定にもなるのである(ルドルフは王族や大富豪ではないが、ちゃんとした勤め人ではあるようだし見た目もよい))

(あと2回くらいかな)

 

https://trnlat.hatenablog.com/entry/2019/05/23/230458 に続く