O・ヘンリー「運命の衝撃」(THE SHOCKS OF DOOM) 翻訳中(03)
公開版:運命の衝撃 : 11005m
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O・ヘンリー「運命の衝撃」(THE SHOCKS OF DOOM) 翻訳中(02) - ぐるぐる飜譯
He had given up his apartment that morning. His furniture had gone toward certain debts. His clothes, save what were upon him, had descended to his man-servant for back wages.
訳:彼は今朝アパートに見切りをつけた。家具はすでに借金のかたで失っていた。彼の服も、いま着ているもの以外は、未払い賃金の代わりに下男に下げ渡していた。
訳者の理解(もしくは無知無理解):
He had given up his apartment は「アパートの家賃が払えなくなった」ということなんだろうけど、given upを「見切りをつけた」としてよかったろうか。「叩き出された」わけではなさそうだから、原文には「(強がって)自分から出てきた」というニュアンスが入っているとは思うのだが。大久保訳では「いさぎよく捨ててきた」になっていた。
As he sat there was not in the whole city for him a bed or a broiled lobster or a street-car fare or a carnation for buttonhole unless he should obtain them by sponging on his friends or by false pretenses.
訳:こうして座っている彼にはもはや、街中のどこをみても、ベッドも、炙ったロブスターも、路面電車の料金も、ボタン穴のカーネーションだって、友人にたかるか騙し取るかでもしないかぎりどうにもならない。
訳者の理解(もしくは無知無理解):
英文の和訳しづらいやつ。「彼はこうして座っていた」→「(そんな彼には)街中のどこにもない」→「(なにがないのかというと)ベッド1台、炙ったロブスター1匹、路面電車の料金、紳士が服のボタン穴にさすカーネーション1輪がない」→「ただし友人にたかるか、詐欺でもすれば(話は別だが)(←英語でよくある反語的付け足し)」
Therefore he had chosen the park.
訳:そういうわけで、彼は公園を選んだのだ。
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